又次が亡くなり、小松原の妻が子供をなしたと聞き、料理に勤しむ澪。
又次のお陰で自分の手習いをしてくれるようになったふきちゃんに、つる家の面々に支えられ、元気になる。

一方、ご寮さんと二人で探し続けていた佐兵衛の話を聞く。吉原出身のお薗さんという方のお陰で、佐兵衛は病床から生還し、お薗さんと一緒になって娘がいるという。どうしてご寮さんの前に現れてくれないのかと気を揉むご寮さんだったが、周囲の支えもあり、生きているだけで充分と考えられるようになる。
やがて首根っこを捕まえられてやってきた佐兵衛は、もう自分は二度と包丁を握らないと言う。それを聞いたご寮さんは、跡取りの佐兵衛がそう言う以上、天満一兆庵の再建は諦めるというのだ。澪にもそうしろというご寮さんにかける言葉がない澪。そんな時、登龍楼から澪を引き抜きたいとの話が来て、澪は四千両用意するなら考えると吹っ掛ける。すると登龍楼は、それならば新しく作る吉原の登龍楼に相応しい料理を期限までに作って来れば用意しようと言う。

中々用意する料理を思い付かない澪に、源斉医師から、野江に会いに行こうと誘われる。又次を火事で失った野江は、心身共に辛い時期にあり、澪をつる家の料理人として、幼馴染みとしてではなく、あさひ太夫として会った二人は、又次の代わりに、野江にこれからも弁当を届けると言ってくれた源斉医師に感謝する。

野江がしていた髪飾りからヒントを貰い、新しい料理を考え付いた澪は、登龍楼に持っていくが、悔しさを出すもののバカにされる。そこで澪は、佐兵衛の登龍楼には関わるなという忠告には背いてしまうかもなと思いつつ、つる家に戻る。野江と澪の関わりを知った種市は、澪につる家をずっと背負う必要はないと言う。つる家には誰か他の料理人を探すと言う種市の言葉で、澪は野江を身請けする為に、気を引き締める。

一柳の親父さんが倒れ、看病を頼まれたご寮さんは、その女将としての才覚を見初められ、一柳の後添えにとプロポーズされる。
今までご寮さんとずっと一緒に生きていくのだろうと思っていた澪だが、ご寮さんの女の幸せを考えるのだった。

『残月 みをつくし料理帖』
著者 高田郁
発行元 角川春樹事務所
ISBN 978-4-7584-3745-5